作者:桜めっと

VTuber「星野ネネコ」は、愛らしい猫耳魔法少女のアバターで多くのファンに愛されていた。週3回の配信が日常となっていたが、ある日を境に彼女は突然配信を止めた。
SNSも更新が途絶え、ファンたちは騒然とした。
「ネネコ失踪事件」として、ネット上で噂が広がっていた。
ハヤトは、都内に住む普通の高校生。
勉強は少し苦手なため、オンラインで家庭教師を付けてもらっている。
「カエル先生、昨日のネネコの配信でさー…」授業終わり、パソコン画面に収まっているカエルのアバターに話しかけていた。
家庭教師に話したこの「ネネコ」は、ハヤトにとっていわゆる「推し」である。
家庭教師も推し活もオンライン上でできてしまうのだから、便利な時代だ。
好き勝手話すハヤトの話を、家庭教師は快く聞いてくれる。「その探究心が、勉強にも活かせるといいんですけどね」と、笑いながら。
ハヤトにとって、ネネコは特別だった。
こんなに誰かを応援したいと思ったことは、今までなかった。
ハヤトはネネコのデビュー当初から応援していた古参ファンだった。
彼は「ネネコクラブ」というグループに所属しており、ネネコの配信が終わった後、その感想をグループトークで語り合うことが日課だった。
月曜日、水曜日、金曜日。
この日の夜を、ネネコクラブの全員が待ち侘び、推しトークに花を咲かせていた。
ところが、ネネコの配信が突如止まってしまったことで、グループの話題は一変する。
「ネネコが失踪した」その話題で持ち切りになった。
「ネネコが2週間も配信しないなんて変だよ。
今まで週3回の配信を、ただの1度も休んだことがないのに…。」
ハヤトの言葉に、ネネコクラブの全員が同意した。
相談した結果、ハヤトは他のメンバーと共にネネコの失踪の謎を追うことになった。
メンバーは、コミュニケーション能力の高い神(かみ)、内気なチェリー、しっかり者の虎之助(とらのすけ)、そしてその彼女であるあみにゃん。
みんなネネコを愛するファンでありながら、お互いの顔を知らないまま1年間繋がっていた。
「ネネコ、どうしちゃったんだろう…」とハヤトがグループにメッセージを送ると、神がすぐに反応した。
「ここだけの話、ネネコに脅迫文が届いてたらしい。他のVTuberから聞いた情報なんだけど…かなりショックを受けていたようだよ」
「脅迫文?」とハヤトは驚いた。
ネネコがそんな危険な状況に置かれていたなんて思いもよらなかった。
「『お前の正体を知っている』という内容だったらしい」と神が冷静に続ける。
「正体」とは、VTuberの「中身」。
つまり、ネネコの声をあてている実際の人物が特定されたということだろうか。
この話を受け、ハヤトたちは「ネネコクラブ」でのオフ会を開くことにした。
直接会って話し合うことで、ネネコ失踪の謎を解き明かそうという神からの提案だった。