作者:桜めっと
オフ会はカラオケボックスで続けられたが、歌うことはほとんどなく、ネネコの失踪について話し合う時間となった。
神が中心となって議論を進め、ネネコが悩んでいた可能性について話し合った。
「ネネコは天真爛漫でいつも明るかったけど、中身はきっとどこにでも居る普通の女の子だ。脅迫文が相当ショックだったんだろう」と、神が冷静に推測する。あみにゃんは深く頷いた。「わかる。同世代ぐらいの女の子かなぁって思ってるし。女の子にそんな酷いこと、絶対できないよ…」
ネネコの配信を思い出していたハヤトは、ふと以前からほんのりと感じていた疑問を口にする。
「俺の気のせいかもしれないけど、金曜日の配信だけいつも短かくなかった?」
「そういえば…」と、虎之助も口を開く。
「金曜日は、どことなく元気がなかったような気がする。皆も知っての通り、私、ネネコの切り抜き動画を作成してるでしょ?その相談で時々ネネコと通話してたんだ。なんとなく元気がないように感じたのは、金曜日の夜が多かったような気がする」
「金曜日って、何か特別なことがあったのかな?」と、あみにゃんが疑問を口にする。
続いてチェリーが「うーん。ネネコの中の人が、土日仕事だとか。
みんなが休みの日に仕事って、考えただけで気が重いです…」と言葉を連ね、他のメンバーも様々な可能性を思い描いた。
しかし、ネネコの私生活が伏せられている以上、誰もその理由をはっきりとは掴めなかった。
最初のオフ会が終わり、ハヤトは街灯が点々と並ぶ夜道を一人で歩いていた。
街は静まり返っており、遠くに響く車の音が妙に耳に残った。
メンバーとの再会を約束したはずなのに、どこか胸騒ぎがして落ち着かない。
さっきまであんなに盛り上がっていたのに、解散してみれば不安がじわじわと湧き上がってくる。
ふと、足を止める。
どこからか視線を感じる気がした。
あたりを見回しても、ただ暗闇が広がるばかり。
ビルの隙間から伸びる影が、まるでこちらを見張っているかのように感じられた。
足音もない。
風も吹いていない。
ただ、背後に何かが潜んでいるような、ひそやかな気配だけがまとわりついていた。
「…気のせい、か」
ハヤトは自分に言い聞かせるように呟き、再び歩き出した。
だが、歩みを進めるほどにその気配は薄れず、むしろ一歩一歩近づいてくるような錯覚さえ覚えた。
振り返ろうとするも、何かに背中を押されているかのように前へ進まざるを得ない。 誰かが、こちらを見ている──そう確信するも、振り返ることはできなかった。